今の家に引っ越してからもう四年になる。
引っ越さなくてもよかったのに!と多くの人に言われながら、また、もしかして自分でも無理やり引っ越しをしたかもしれないとも思いながら、あれから四年経った。
住みたい地域に必ずランクインするところで、高い家賃を払いながら暮らしているけれど、なぜか心のどこかで住み難さを感じていて、でもそれは自分が選んだことなのだから仕方ない。
その住み難さは、生活態度にダイレクトに影響していた。
綺麗好きだったのに、掃除できなくなった。
基本自炊だったのに、全く自炊しなくなった。
いろんなことがいい加減になって、どうでもいいと思うようになった。
この3つは自分自身を大きく変えてしまった。
なんとか暮らしていかなければいけないと思うので、1年過ぎた頃にやっと掃除をしようと思った。それまで拭き掃除もせず、掃除機すらない日々を送っていたのだ。
思い直して、やっと掃除機を買った時は、お掃除シートを使うだけでは取れなかったホコリなんかが取れた気がして嬉しかった。
2年経った冬、急に調子を崩した。意味不明に嘔吐したのだ。
病院に行って検査してもわからなかったけれど、自分では不摂生をしていたからだと思った。引っ越してから外食ばかりで、時には甘いもので栄養を摂っているようにごまかしていたので、体が悲鳴をあげたんだと思う。
それをきっかけに、シンクを使うようになり、ガスを使って汁がある炊いたものを作るようになった。和食。炊くものだけ。
なんとか掃除も食事も少しだけ克服していたけれど、以前のような几帳面さはない。
汚いといえば、汚い。
ちゃんと食べているかというと、食べていない。
このままだとよくないとは思いつつ、全くやる気が出ない。
更年期なのか?
とにかく、こんな自分になるなんて思っていなかった、そんな4年間だった。
最近、仲のいいおじさんがいる。
おじさんには家族がある。
私は自分の家に招待するのは彼氏だけと決めていた。
でも、おじさんが来たいというから、一度だけのつもりで来てもらった。
ら、おじさんは私の部屋を気に入ってくれた。
ただ、口だけではなくて、次来た時に模様替えするから!と意気込んでくれた。
半信半疑ではあったものの、ちゃんと次来た時に模様替えをしてくれた。
掃除が行き届いてない端々からホコリが出て来て、靴下の裏で掃除してるようだと言いながらおじさんは楽しそうに全ての家具を以前と違うところに配置してくれた。
しかも、ちょっと前まで単身赴任していた時に使っていた炊飯器まで持って来てくれたのだ。
炊飯器は調子を崩した時に新しいものを買ったものの、使おうという気持ちになれずに安くメルカリで売ってしまったのだ。
炊飯器は、おじさんが使っていたものだった。
綺麗だった。使ってないから綺麗なのではなく、使い方が綺麗だったのかもしくは持ってくる前に改めて掃除したのかもしれない。
とにかく、これは使わなければ!と思った。
おじさんが持って来てから5日経っていたけれど、お米も買ってもらってたので、やっとご飯を炊けた。
おじさんが来た時に、買って2年経っていた鉄のフライパンを下ろして使った。
おじさんが油を引いてしばらく置いておくとか、初めの手入れをしてくれた。
そのフライパンを使って、引っ越して初めて自分で(この前はおじさんが)調理した。
ご飯と、炊いたおかずと炒めたおかずで晩御飯を食べた。
この家でお米を炊いて食べたのは初めてだった。
美味しすぎて感動した。
同時におじさんの優しさを噛みしめる。
どうやら、引っ越ししたことは私の闇になっていて、とても深かったようだ。
少しだけ、ほんの少しだけ固く締め付けられていたものが緩んだ気がする。
おじさんには本当に感謝しかない。
4年経って、やっと生活らしいことした気分だ。