中学1年生の夏、
いつも自転車置き場の側にある校舎の上の階の窓から
登校している私たちを、上級生がのぞいていた。
小さい学校だったので誰なのかは調べればあっという間にわかった。
いつの間にかその人は私に話しかけるようになって、
ある日、学校の帰り途中、自転車に乗ってるのを追ってきて
手紙を渡された。
ラブレターだった。
まだまだ子供の私だったし、かっこいいなと思う同級生がいたので、それはそれは戸惑ってしまった。知らない人に手紙もらっていいのか?っていう、そんなことが怖かった。
それは、中学校1年生の7月7日。
七夕の日だった。
夜空が綺麗だったとか、そんなことは覚えていない。
ノートを綺麗に破って書いていて、綺麗に折ってあった。
びっしり綺麗な字で書かれた文字の最後に7月7日と書いてあったから覚えている。
そんな甘酸っぱい出来事は、のちの私をずっと翻弄し続ける。
人見知りの私は結局、彼の気持ちに答えることができず、でもそこは思春期。
彼が中学校を卒業するのが寂しくて、人前に出るのが苦手だった私が卒業生に渡す花を彼めがけて渡しに行ったのを覚えている。
ずっと彼を気にし続けた中学の3年間。
振り返るとなかなかのラブストーリーだった。
若かったころを思い出すなんて、歳をとった証拠。
でも、特別な日になっているので、七夕の日はいつも空を見上げる。
彼を思い出すのではないけれど、そんな思い出を引っ張り出して、夜空を見る。
昔は天の川が綺麗だった。
でも、最近はいつも雨。
晴れた夜空は見えない。
こんなご時世だから、せめて見上げた空が美しくあってほしい。